日本の難民受け入れ問題

難民、難民条約とは?

国際難民条約について

難民の保護を保証し、難民問題の解決を目的として1951年に外交会議にて「難民の地位に関する条約」が採択され、その後1967年に「難民の地位に関する議定書」が採択されました。この二つを合わせたものが「難民条約」と言われています。
難民条約において特に保障されているべきものとして
「難民を彼らの生命や脅威にさらされるおそれのある国へ強制的に追放したり、帰還させてはいけない。」(ノン・ルフールマンの原則)
「庇護申請国へ不法入国しまた不法にいることを理由として、難民を罰してはいけない」
ということが定められています。

難民条約に定義された難民の要件に該当すると判断された人を「条約難民」と呼んでいます。難民条約第1条A(2)で定義された難民の要件は、次のとおりです。
(a) 人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
(b) 国籍国の外にいる者であること
(c) その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること

日本は国際難民条約に加入し、難民受け入れ国となった

日本は1981年に難民条約に批准し、1982年1月1日より難民受け入れの義務がある難民受け入れ国となりました。「難民認定手続き」とは外国人が難民の地位に該当するかどうかを審査し、決定する手続きであり、出入国在留管理庁がその業務を管轄しています。
難民認定に批准したことにより、日本の国内法も難民受け入れのため整備する必要があったため「出入国管理令」は「出入国管理及び難民認定法」と改定されました。

日本の難民受け入れの現状

2019年の認定者数について

2019年(平成30年)の難民申請者数は、10,493人(審査請求者数は、9,021人)。
条約難民の認定者数は42人(約0.4%)でした。
その他の人道上の庇護等を合わせると、受け入れ数は104人(約1%)でした。
この数字は、例年と同様の水準にとどまっており、難民認定率は他批准国と比較して圧倒的に低いのが現状です。

以上のように日本の難民受け入れ率が他批准国において圧倒的に低いのは、日本に来る難民申請者自身に特別の事情があるからでしょうか?
いえ、そうではありません。
同じような事情で別々の国に逃れた難民申請者のその後の違いについて、いくつか事例を挙げます。

⑴ アフガニスタン難民の兄弟
Aさんの弟はスエーデンに逃れ2週間後に難民として受け入れられる。本人はカナダに行く予定であったがブローカーに騙されて日本に来て収容され、難民不認定となる。
⑵ スリランカ人の兄弟
姉、弟がカナダに逃れ難民として受け入れられる。

以上から結論として、日本は難民条約に批准し、難民を受け入れる義務があるにも関わらず、事実上は難民を受け入れていないというのが明らかです。上記の事例はごく一部であり、枚挙に暇がありません。

日本の難民受け入れの運用と問題点

立証責任を負わされ、基準も厳しい

難民認定手続きにおいて入管は「難民の認定は,申請者から提出された資料に基づいて行われます。したがって,申請者は,難民であることの証拠又は関係者の証言により自ら立証することが求められます。」と定めています。
つまり本人が自らの難民性を立証しろということです。これは実は難民申請者にとって高いハードルです。
加えて、日本は難民として認定される基準が厳しいと国内外から批判されています。入管は難民性の立証において民事訴訟のレベルを要求します。
立証責任を本人に負わせたうえ、量も質も高い証拠を要求する。これは難民申請者本人たちにとって不利なのは言うまでもありません。

UNHCR基準との相違点

UNHCRの基準文書では立証基準をガイドラインとして次のように示しています。
「証拠に関する限り、難民申請は刑事事件とも民事上の訴えとも異なるものである。」
「申請者の話が全体的に一貫しており、一応確からしいと審判官が判断した場合には、いかなる疑いの要素も当該申請を損なうべきではない。つまり、申請者は灰色の利益(疑わしきは申請者に有利)を与えられるべきである。」
難民不認定による結果の重大性を考慮すれば、灰色は申請者の利益となるのは必然です。これが国際的なスタンダート基準です。
ところが、法務省入管は以前から、申請者は自分が難民であることについて、「合理的な疑いを容れない程度の証明」をしなければならない。」と主張し、訴訟外の行政処分にUNHCR基準とは相容れないより厳格な民訴立証基準を用いています。

難民申請者の二重性

出入国管理法からみれば難民は、ほとんど全て不法滞在者、不法入国者です。しかし、難民認定法からすれば、難民条約加入国日本に庇護を求めてきた難民申請者です。
難民は不法滞在者、不法入国者でもあり、難民申請者でもあるという二重性を持っているのです。

出入国管理行政に従属した難民受入

以上のように二重性を持った難民の申請受付、難民性の調査、難民であるかどうかの審査・認定を、日本では不法入国者や不法滞在者を取り締まる入管が行います。
そのため、これらの過程に「お前は不法入国者、不法滞在者だ。悪い奴だ。」という予断と偏見が深く入り込みます。
このように不法入国、不法滞在者の摘発、排除・強制退去など出入国管理行政を行う入管が、難民申請の受付、難民調査、難民審査・判断(法形式上は法務大臣が認定)をし、その入管が難民申請者に退去強制手続き適用し、退去強制処分とすることに、日本の難民申請者数及び難民認定数が少ない元凶があります。

結論を言えば出入国管理行政に従属した難民受入がされていることに、日本の難民受入の根本問題があるのです。
難民支援者や国連難民高等弁務官日本韓国事務所(UNHCR)などが、この問題を度々指摘し、公正な審査を確保するために入管とは別の独立した第三者機関が難民申請の受付、難民調査、難民審査・認定をするよう法改正をすべきである、また難民申請中は退去強制手続き停止すべきであるとの要求がなされています。

 

難民不認定のその後

摘発後、もしくは収容後に難民申請を行った場合 、ほぼすべての難民申請者は不認定を下され、退去強制令書が発付されます。
それによって、長期の収容を強いられ、また収容から解放されても、仮放免状態で10年近く耐えなければなりません。
近年、日本の難民受け入れが少ないことは、徐々に知られるようになっていますが、難民不認定となった後、外国人収容所に収容されていること、そして仮放免状態にあることはほぼ知られていません。

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